最後の怖い話
これは私が聞いた最後の怖い話です。
どうか最後まで、聞いてくださいね。
…ところでお前よ、怖い話好きか?
やめとけ、怖い話なんてろくなもんじゃない。
ん?いや、俺は作ってたんだよ。クリエイターってやつだ。
両親が早くに死んでな、この歳になっても仕事しないで、遺産で暮らしてたんだけどよ。
いわゆる勝ち組ニートってやつだ。
でもやっぱ何もしないのは暇だからよ、趣味で怖い話作ってたんだよ。
某掲示板に乗っけてたりしてな。
まとめサイトとかにも載ったことあるからな、お前も読んだことあるの、あると思うぜ。
ん?あのカラスが鳴く橋の話とかさ、"キンジテ"とか有名だと思うんだけ…
知らねぇのか。まぁいい。
でよ、また怖い話作るかーって、考えてる時に、
俺寝落ちしちゃったのよ。
その時に見た夢がさ、まんま、直前に考えてた怖い話でよ、
森の入口に可愛い女の子が立ってんのよ。
んで、その女の子が森に入って行くんだけどさ、
俺その話のオチ知ってるからさ、行きたくなかったのよ。
俺が作ったからな。
しかし夢の力ってのは偉大でなぁ、
直前に考えてたのに、自分が作ったってことは忘れてんのよ。
おまけに身体も勝手に動いて、女の子に着いてくわけ。
その話のオチなんだけどよ、
女の子に着いてった男を突然鎌持ったオッサンが襲ってくんのね。
その森には狂ったオッサンがいてよ、オッサンに殺された女の子の霊が、死体見つけて欲しくて人呼ぶんだけど、
呼ばれた人はみんなオッサンに殺される。
生きてる人間が1番怖いですねー
っつう、まぁ今考えるとしょうも無いオチなんだけどな。
だから俺は先手を打ったわけ。
前からオッサンが歩いて来てんの見えたから、
全力ダッシュでブチかましてやったのよ。
そんで馬乗りんなって、何発殴ったか覚えてねぇくらい殴ったところで、
目が覚めた。
目が覚めると、俺の下にはオッサンの死体があるわけよ。
周り見ると近所の山の獣道でよ、
そのオッサンもよく見ると、いつも夜中に近所徘徊してるオッサンなわけ。
やっちまったんだよ。
寝ぼけてな。
それまで夢遊病とかなんもなかったからよ、
おっと。
動くなよ。
その位置なんだよ。
さっき殺したオッサンが埋まってんの。
丁度よかった。
せっかく俺が作った最後の怖い話なのに、
実写版で女の子がオッサンに代わってたら萎えるもんな。
心配しなくても大丈夫ですよ。
あの人は今、寝ている時間ですから。
彼女がそう言い切る前に、
僕はその場から逃げ出した。